9.子供たちの自力


今回は、入試直前講習中の生徒たちの状況から考えたことを書いてみようと思います。

私立入試も無事終わりいよいよ公立前期・後期に向けての最後の追い込み時期です。子供たちは、私立入試を通じて選抜試験という経験を積みました。本番の試験の怖さや試験で自分の力を十全に発揮することの難しさ、それらの不安を自分で乗り越えることによって得られる自信など人生の糧になるとても大切な経験です。最近、大学入試で推薦入学を果たして喜んでいる学生を見て思います。『なぜ、入試という自分の人生の糧になる貴重な経験をみすみす放棄して楽な道を歩もうとするのか?』と。いやいや、『推薦入試だって学校の成績を常に上位でとらないと合格しないから、楽ではないよ』という意見も聞かれそうですが、それは人生の経験値の観点からは違います。範囲が決められた学校の定期テストでしかも学内だけで審査されるのと、入学試験の広範囲でしかも全国の学生が対象となる一般入試ではその厳しさは比較にならないからです。そして、楽な道を歩んで目的地に達した場合、そこから得られる成功体験は将来の困難や不安を解決する何の助けにもならないのです。


私は、試験関係では本当によく失敗しました。もともと自分の能力以上のことを無謀にも挑戦する性格のせいでいろいろと苦労するのですが、自分なりに頑張っていい形で入試シーズンに入るのです。でもいつも本番前の調整に失敗するといいますか、つまり詰めの段階で甘さがでる傾向のため失敗する経験を積んできました。失敗のたびに本当に情けなく思いましたし、自分以上に周りの人達ががっかりする姿に心が痛みました。ところが、失敗をへてそれを乗り越えないと打開できない絶体絶命の土壇場になるとなぜかいい結果を得られてきたのです。『火事場のクソ力』的なことを身をもって体験したことで、私の人間力はその都度強くなりましから失敗の経験も貴重と言えるのです。


入試シーズンを真剣に向き合った子供たちは入試に向けた勉強・本番の試験を通じて自分の弱さ・いいところいろいろ気づくことがあると思います。いずれにしても『自分を知る』貴重な機会です。


教える立場になって、新たに気づくこともあります。子供たちが、短期間でも目標が明確に見えてくると急成長できることです。今までの彼らは『眠っていたのかな?』と思うくらい(実際能力的には眠っていたわけですが)急激に進化を遂げます。教えていても『伸び率すごいな』と驚かされることがあります。『人間の能力なんて決め付けるものじゃないな』、と再認識させられる瞬間です。大人になるとチャレンジできる機会が減るため、どうしても失敗に対して臆病になったり、失敗を恐れて結果を先読みしてしまいます。そして、残念ながら大人は考え方が固定化されがちで急成長できません。だから、大人の目線で子供達の進路に関わると、せっかく進化を遂げようとしている子供たちの芽を摘み取ることにもなります。『過去の実力テストがどうだったから本番の試験では難しいだろう』とか、『去年のデータはこうだったから志望校を下げたほうがいい』とか過去形ばかりで無難な判断する臆病者が進路指導することは本当に勘弁被りたいものです(これは、自省を込めて言っています)。私が、公立の進路指導の時、気を配る点は2点です。①戦えるギリギリの内申があるか②本番の公立入試の傾向に即して意欲・学力ともに勝負できるか、 です。①・②の要件を充たすのであれば、せっかくの子供たちの成長を止めたくないので、彼らの自力を信じて挑戦させます。それで、たとえ結果が残念であっても必ず人生にはプラスになるという確証があるからです。もちろん誰もが無謀に挑戦すべき、と言っているわけではありません。特に②の要件を充たさない生徒は、仮に内申が十分にあっても、過去の成績がどうであっても現状態が危険なのでチャレンジは勧めません。言いたいのは、マジになった子供たちの自力を私を含め大人たちはもっと信じないといけない、ことです。

2期生とすごすのもあと少しです。入試を通じて彼らの人生にとって何かきっかけとなるものをつかんでくれたらいいなと思い、残りの貴重な時間をすごしていこうと思います。(2014年2月13日)